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Vol.126 井上式!よくわかる目の病気事典<番外編>


40歳からはじめる!アイフレイル対策

最近、目が疲れやすい、目がかすむ、眼鏡が合わなくなった気がする…ささいな目の違和感を「年齢のせい」と我慢していませんか?それは「アイフレイル」と呼ばれる段階かもしれません。今回は、アイフレイルとはどんな状態か、セルフチェックの方法や気を付けたい病気について解説します。

アイフレイルとは?

フレイルとは「加齢によって身体のさまざまな機能が低下し、健康障害に陥りやすい状態」のこと。それは目にも同じことが当てはまります。アイフレイル(◇)は、「加齢によって目の機能が衰えた状態」です。目の不調や衰えが起こると、病気のリスクも高まります。それを見過ごし、視覚障害を招くと、日常生活が大きく制限される可能性があります。目の健康寿命を延ばすためにも、40 歳を過ぎたらアイフレイルの対策をすることが重要です。

◇日本眼科医会などからなる日本眼科啓発会議が2020 年から提唱

※1 Inoue S, et al. Assessment of physical inactivity and locomotor dysfunction in adults with visual impairment. Sci Rep, 2018.
※2 米国/英国の老年医学会および米国の整形外科学会合同による「高齢者の転倒予防ガイドライン(2001)」

あなたは大丈夫?アイフレイル10のチェック

まずはチェックリストで目の機能低下を自己点検してみましょう。

目が疲れやすくなった

夕方になると見えにくくなることがある

新聞や本を長時間見ることが少なくなった

食事の時にテーブルを汚すことがある

眼鏡をかけてもよく見えないと感じることが多くなった

まぶしく感じやすい

まばたきしないとはっきり見えないことがある

まっすぐの線が波打って見えることがある

段差や階段が危ないと感じたことがある

信号や道路標識を見落としたことがある

チェックの数が…

チェックが0つの人 あなたの目は今のところ健康です。変化を感じたら、またチェックしてください。
チェックが1つの人 目の健康に懸念はありますが、直ちに問題があるわけではありません。
チェックが2つ以上の人 アイフレイルかも知れません。一度、眼科専門医にご相談ください。
出典:アイフレイル啓発公式サイト https://www.eye-frail.jp/

その他にも日本眼科啓発会議の公式サイトでは、スマホやパソコンで視力測定や視野のチェックなどができる6つのツールが紹介されています。

詳しくはバナーをクリック

井上眼科のアイフレイル調査

アイフレイルのチェックは何個当てはまりましたか? 実は当院グループでは約5,500 人の初診の患者さまにアイフレイルのチェックを実施。その結果、男性は平均2.7(±2.2 個)、女性は平均3.1(±2.2 個)と、女性の方がフレイル症状が多いことが判明。そしてまた40 歳を過ぎると、年齢と共に増加していくことがわかりました(※3)。
現在も皆さまの診療に役立てるべくアイフレイルの調査研究を進めています。

※3 井上 賢治 , 天野 史郎 , 徳田 芳浩 , 塩川 美菜子 , 方倉 聖基:初診患者のアイフレイル調査 , 臨床眼科 77 巻 5 号( 2023 年)

40歳から気を付けたい目の病気

40 歳を過ぎると、加齢や生活習慣などにより、増えてくる目の不調。加齢により発症リスクの高まる目の病気にはどのようなものがあるのでしょうか。

白内障

白内障は「水晶体が白く濁り視力が低下する病気」です。多くは加齢によるもので、早ければ40 代から発症し、60 代で66 ~ 83%の方に見られるようになります。白内障の初期治療として点眼薬がありますが、あくまで進行を遅らせることが目的で、視力が回復させたり、進行を止めることが出来ません。そのため、症状が進行している場合は、水晶体を取り除き、人工の「眼内レンズ」を代わりに挿入する手術が必要となります。
▶くわしい説明はこちらから

加齢黄斑変性

眼底の網膜の中央にある「黄斑」が加齢により傷み、視機能が低下する病気。黄斑には物を見るための視細胞が集中しているため、ここに異常が起こると「中央がよく見えない」、「歪んで見える」など視力に大きく影響します。視細胞が減少し黄斑が萎縮してしまうタイプ(萎縮型)と、網膜に新生血管という、もろい血管が生えてきて出血を繰り返すタイプ(滲出型)があります。
▶くわしい説明はこちらから

緑内障

緑内障は「眼圧(眼内の水圧)の上昇により視神経が圧迫されて徐々に失われる病気」です。視神経が失われると次第に視野(見える範囲)が狭くなり、放置するとやがては視力も低下し、さらには失明に至る危険があります。
緑内障は40歳以上の10人に1人が発症すると言われ、失明原因なる疾病第1位の病気です。けれども、厚生労働省の調査では、9割の人に「自覚症状がない」と言われています。欠けた視野は戻ることがないため、早期の発見がとても大切です。
緑内障の7割が眼圧に異常がない「正常眼圧緑内障」のタイプと言われています。他のタイプのものと比べて、最も進行が遅いため、発見が遅れやすいのという特徴です。
▶くわしい説明はこちらから

糖尿病網膜症

糖尿病の3 大合併症の一つ。糖尿病が原因で網膜の細い血管が障害され視力が低下する病気。進行すると網膜内で新生血管(もろい血管)の破裂・出血が繰り返され、硝子体出血や網膜剥離など重篤な視覚障害を招くリスクも潜んでいます。網膜には痛みを感じる神経がない上、その組織は再生されることがありません。そのため、糖尿病を発症してからの期間が重要です。長い期間、高血糖の状態が続いていると、糖尿病網膜症の重症化リスクも高まっていきます。
▶くわしい説明はこちらから

目の病気を見つける検査

自分では気づきにくい目の病気。どんな検査が有用なのでしょうか。今回は検査の一部をご紹介します。

「眼底カメラ」-眼の奥の血管を撮影

眼の奥にある網膜や視神経、血管などの状態を調べます。周囲を暗くして、瞳孔の奥にある眼底を撮影します。必要に応じて瞳孔を開く点眼薬(散瞳薬)を使用します。

●検査時間 :5 分程度(撮影部位、枚数による)
●わかる病気:緑内障・加齢黄斑変性・糖尿病網膜症など

(右図)視神経乳頭の凹みが拡大しており、緑内障を疑われる状態

<正常な場合>

<異常のある場合>

CHECK POINT!

目の病気だけでなく、血管の状態から動脈硬化や高血圧などの程度がわかり、全身の病気の早期発見につながります。撮影時にフラッシュ光が当たるため眩しさを感じます。散瞳薬を使用する場合は、点眼後20-30 分で瞳孔が開き4-6 時間効果が続きます。瞳孔が開いている間は、眩しく、焦点が合いにくいため、乗り物の運転は控えてください。

「静的視野検査」ー見える範囲の異常を調べる

視野の中心部の感度を調べる検査です。片目で正面の光(固視点)に目を向けたまま、周囲に光を感じたら応答ボタンを押します。

●検査時間 :片目10 分程度
●わかる病気:緑内障・加齢黄斑変性・網膜色素変性症など

(右図)網膜の視神経線維層の薄い部分が赤色で示されています。

<正常な場合>

<異常のある場合>

CHECK POINT!

検査中に目を動かしてしまうと検査結果が不正確になってしまいます。顔を傾けたり、目を動かして光を探さないようにしましょう。瞬きは我慢する必要はありません。集中力を要する検査のため、必要に応じて休憩をはさむこともあります。何度か検査をしていくうちにだんだんと上手になっていきます。まずはリラックスして始めていきましょう。

「OCT(光干渉断層計)」-網膜の断層面を調べる

顔を専用のあご台に乗せ、機器内部の印を見ます。眼の中に近赤外線を当て、反射した光をコンピュータが解析し、網膜の厚みや視神経の状態を調べます。

●検査時間 :5~10 分(両眼)
●わかる病気:緑内障・黄斑に関連する疾患・網膜中心静脈閉塞症・網膜脈分岐閉塞症など

(右図)緑内障の進行により黒い部分に視野障害が見られる

<正常な場合>

<異常のある場合>

CHECK POINT!

近赤外線を利用して撮影するため、被ばくはなく、眩しさもありません。撮影時は、数秒間まばたきを我慢します。その際、印から視線を動かさないことがポイントです。緑内障の検査としては、網膜の視神経線維層の厚みや視神経乳頭の陥凹(かんおう)の程度から診断・経過観察に有用で、視野に異常が出る前の早期緑内障の検出も可能です。


生涯現役の「見える」をサポート

40 歳以上を対象とした意識調査(※4)で、54%の方が「自覚症状があっても1 年以上眼科を受診していない」ことが分かりました。人間は左右の目で補って見ているため、目の病気は初期には気づきにくく、専門的な検査を受けてはじめて分かることがあります。病気によっては完治は難しく、進行を防ぐしかないものもあります。目の病気を知るには、日ごろの自己チェックと共に、定期検査が大切です。
当院グループには各領域の専門医をはじめ、視機能の検査や視能矯正などを行う視能訓練士、手術や入院を支える看護師、医療ソーシャルワーカーなどさまざまな専門スタッフが在籍しています。
見えにくさ・目の不快感がありましたら、お気軽にご相談ください。

※4 日本眼科啓発会議「目の健康に関する意識調査( 2021 年)」

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